断食って本当に良いの?
〜流行りのファスティングを医学的に正しく理解する〜
近年、「ファスティング(断食)」という言葉を耳にする機会が増えています。
「体がリセットされる」「痩せやすくなる」「健康に良い」といったイメージから、ファスティングに興味を持つ方も多いのではないでしょうか。
しかし、その効果や安全性については十分に理解されていない部分も少なくありません。
本コラムでは、流行りのファスティングについて効果や注意点を医学的な視点から解説します。
〇ファスティングとは?
ファスティングとは、一定時間食事を摂らない食事法の総称です。
代表的な方法として、1日のうち16時間は食事を摂らず、残り8時間で食事を行う「16時間断食(16:8法)」や、1日おきに食事制限を行う「隔日断食」などがあります。
これらに共通しているのは、「何を食べるか」よりも「いつ食べるか」を重視している点です。近年では「間欠的断食(Intermittent Fasting)」と呼ばれ注目されています。
| 方法 | 内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| 16時間断食(16:8法) | 1日のうち16時間は食事をせず、残り8時間以内で食事を済ませる方法 | 日常生活に取り込みやすい・睡眠時間を活用しやすい |
| 14時間断食(14:10法) | 14時間断食し、10時間以内に食事を済ませる方法 | 16時間断食より継続しやすい |
| 5:2ダイエット | 週5日は通常の食事を行い、週2回は摂取エネルギーを500〜600kcal程度に制限する方法 | 週単位で取り組める |
| 隔日断食 | 通常食の日と、断食または摂取エネルギーを制限する日を1日おきに繰り返す方法 | 空腹感が強い・体重減少効果は見込みやすい |
| 時間制限食 | 毎日一定の時間帯だけ食事を取る方法の総称 | 生活リズムを作りやすい |
〇ファスティングで期待できる効果
ファスティングでは、体重減少や代謝機能の改善など、様々な健康効果が報告されています(Chen YE, et al 2024)。
- 体重減少
- 体脂肪減少
- 血糖値改善
- インスリン感受性が改善(太りにくい身体づくりにつながる)
また、断食中は体内で利用されるエネルギー源が糖質から脂肪へ切り替わりやすくなります。この変化は「メタボリック・スイッチ」と呼ばれ、脂肪燃焼の促進や代謝機能の改善に関与すると考えられています(Mattson MP, et al 2019)。
つまり、適切に実施すればファスティングは健康づくりの選択肢の一つになり得ると考えられます。
〇断食すれば痩せやすい?
ここで気になるのが、「通常の食事制限よりも効果が高いのか?」という点です。
実は、現在の研究ではファスティングが必ずしも通常のカロリー制限より優れているとは示されていません。
同じ摂取カロリー量で比較した場合、体重減少・血圧・脂質代謝といった健康指標の改善効果は、通常のカロリー制限と比較して大きな差が認められなかったと報告されています(Moro T, et al 2024)。
つまり、「断食そのもの」に特別な減量効果があるというよりも、結果的に摂取カロリーが減少することで体重減少や代謝改善などの効果が得られると考えられています。
〇ファスティングを行う際のポイント
ファスティングを取り入れる際は、次の点を意識しましょう。
- 極端な断食は避ける
- こまめに水分を摂取する
- 食事時間内は栄養バランスを意識する
- 適度な運動を組み合わせる
特に運動を併用することで、筋肉量や体脂肪のバランス改善、代謝機能の向上につながる可能性が報告されています(Khalafi M, et al 2024)。
〇ファスティングを行う際の注意点
ファスティングは適切に実施することで健康効果が期待できますが、方法を誤ったり過度に実施すると、身体にさまざまな悪影響を及ぼす可能性があります(Zhong F, et al 2024)。
主な副作用として、頭痛・めまい・疲労感・低血糖などが報告されています。
また、成長期の子どもや妊娠中の女性、糖尿病治療中の方では、長期間の過度な断食によって、筋肉量の減少・栄養不足・体調不良につながる可能性があります。
健康法として取り入れる場合でも、無理のない範囲で行うことが大切です。
〇まとめ
ファスティングは近年注目されている健康法の一つですが、万能な方法ではありません。
体重減少や代謝改善などの効果が期待できる一方、頭痛や疲労感、栄養不足といったリスクも報告されています。
大切なのは、「断食」そのものではなく、自分に合った方法で無理なく継続できる健康的な生活習慣を身につけることです。
執筆者
池尻大橋せらクリニック 理学療法士 山下 暁
監修
池尻大橋せらクリニック 医師 世良 泰
池尻大橋せらクリニック