パフォーマンスを決めるのは筋膜?
最新スポーツ科学が語る柔軟性の正体

「体が硬い=筋肉が硬い」
そう思っていませんか?

近年は“筋膜”という言葉が広まり、柔軟性やパフォーマンスとの関係が注目されています。
ただしこの筋膜、実は定義が完全には統一されていないという、まだ未確定な背景があります。

〇そもそも筋膜とは?

筋膜とは一般的に、筋肉を包み込み、身体の中でそれぞれを区切りながらつないでいる結合組織とされています。

ただし最新の研究では、この定義に揺らぎがあります。
ある研究者は「筋膜は全身をつなぐネットワーク」と広く捉える一方で、別の立場では「筋膜はあくまで線維性の膜構造」とする見方もあります。
実際、近年の論文でも筋膜の意味は統一されておらず、議論が続いていると指摘されています。

つまり筋膜は、「明確に決まった一つの組織」というより、捉え方によって広がる概念とも言えるのです。

〇筋膜と柔軟性の関係

では、そんな筋膜がなぜ柔軟性に関係するのでしょうか。

共通して言われているのは、筋膜が“組織同士の動き”に関わるという点です。
筋膜は筋肉や臓器の間に存在し、それぞれがスムーズに動くための環境を作っています。

この滑りが悪くなると、関節の動きは制限され、「硬さ」として感じられます。
つまり柔軟性とは、単に筋肉が伸びるかどうかではなく、組織同士がスムーズに動ける状態かどうかとも考えられます。

また、筋膜は連続して存在するため、一部の硬さが離れた部位に影響する可能性も指摘されています。
この“つながり”の視点は、従来の柔軟性の考え方を大きく広げています。

〇筋膜を生かしたストレッチ

こうした特徴を踏まえると、ストレッチの考え方も変わってきます。
ポイントは「一部分ではなく、全体の流れで動かすこと」。

ゆっくりとした動的伸張で行う場合は、長い筋膜連鎖を生かした動きを見つけることが大事になります。
今回は、筋膜を生かしたストレッチを1つご紹介します。

① ビッグキャットストレッチ

図1 横向きに寝る姿勢

A

図2 上の手を開いて体をひねる姿勢

B

A指先からお尻の骨(座骨)、頭から踵までの長い後方の連鎖に対するストレッチ
B骨盤あるいは胸郭を片側に回旋して伸ばす(写真は左の体側全体の伸長感を感じる)
ポイント:呼吸に合わせながら、吐く息でお尻をさらに後ろに動かすことでより全体にストレッチ感を感じることができます。

また、ゆっくりした動きや呼吸と合わせることで、組織同士の滑りが改善しやすくなります。
フォームローラーなどのセルフケアも、この“滑走性”にアプローチする方法の一つです。

〇まとめ

筋膜は、まだ完全には定義されていない曖昧な存在です。
しかしだからこそ、「筋肉だけでは説明できない動き」を理解するヒントにもなり、つながりを生かすことで、普段のストレッチをさらに効果的にできるものになるといえるのではないかと考えます。
筋膜という視点を取り入れることで、より本質的な動きに近づき、自分が理想とする柔軟性を手に入れることができるかもしれません。

執筆者
池尻大橋せらクリニック 理学療法士 中山 みのり
監修
池尻大橋せらクリニック 医師 世良 泰
池尻大橋せらクリニック