脂肪だけ落とす!
アスリート向け“ボディリコンプ”入門

競技力の向上や、引き締まった身体づくりを目指す方にとって、「筋肉量をできるだけ維持しながら、脂肪を減らす」ことは重要なポイントです。しかし、単に体重を減らすだけでは、脂肪だけでなく筋肉量まで減少してしまう可能性があります。そこで近年注目されているのが、「ボディリコンプ」という身体づくりの考え方です。本コラムでは、「ボディリコンプ」について、その可能性と実践するためのポイントを、医学的な視点から解説します。

〇ボディリコンプとは?

ボディリコンプとは、体重そのものの増減ではなく、体脂肪量を減らしながら、筋肉量(除脂肪量)を維持、あるいは増加させることを目指す身体づくりの考え方です(Barakat C, et al 2020)。一般的な減量では、エネルギー摂取量を減らすことで体脂肪量を減少させますが、減量方法によっては筋肉量も一緒に減少する可能性があります。その結果、基礎代謝量(安静時に消費するエネルギー)や身体機能の低下につながる可能性があります。一方、ボディリコンプでは、筋力トレーニングや適切な栄養管理を組み合わせることで、筋肉量をできるだけ維持・増加させながら、体脂肪量を減らすことを目指します。そのため、体重が大きく変化しなくても、体脂肪量が減り、筋肉量が増えることで、身体の引き締まりや身体機能の改善につながる可能性があります。

一般的な減量 ボディリコンプ
目的 体重計の数字(減量)を最優先 筋肉量(除脂肪量)の維持・向上を最優先
影響 体脂肪と同時に筋肉量も減少リスクあり 体脂肪を選択的に削減
結果 基礎代謝量低下・身体機能低下リスクあり 見た目の引き締めや身体機能向上につながる

〇適切なトレーニングとは?

ボディリコンプに重要なのが、筋力トレーニングです。筋肥大を目的とする場合、十分なトレーニング量を確保することが重要であり、週当たり10セット以上が一つの目安とされています。また、筋力向上を目的とする場合には、80%1RM以上の比較的高負荷なトレーニングを1種目当たり2~3セット、週2回以上行う方法が有効とされています(Currier S, et al 2026)。具体的には、スクワットやデッドリフト、ランジなど複数の筋群を使う種目を組み合わせ、全身をバランスよく鍛えることがポイントです。さらに、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を取り入れることで、身体活動量を増やすことができます。その結果、エネルギー消費を高めることができ、より効果的に脂肪を減少させることができます。

〇食事管理のポイント

トレーニングだけでなく、食事管理を組み合わせることも重要です。特に注意したいのが、エネルギー制限の程度と減量のペースです。筋力トレーニングを行っている場合でも、エネルギー不足が大きくなるほど、筋肉量の増加が妨げられる可能性が示されています。特に、1日あたり約500kcalを超えるエネルギー不足では、筋肉量の増加が妨げられる可能性があります(Murphy C, et al. 2022)。また、極端な食事制限や急激な減量は、身体が必要とするエネルギーを十分に確保できない「低エネルギー状態」を招き、さまざまな健康上の問題につながる可能性があります(Logue DM, et al. 2020)。短期的には、

  • 疲労感
  • 集中力の低下
  • トレーニングや競技パフォーマンスの低下

などがみられることがあります。さらに、エネルギー不足が長期化すると、

  • 女性は月経機能の低下
  • 骨密度の低下
  • 疲労骨折リスクの上昇

などにつながる可能性があります。また、代謝機能や回復能力にも影響を及ぼすことがあり、特に成長期の選手や、すでに体脂肪が少ない選手では、過度な減量による健康への影響に注意が必要です。減量を行う場合は、試合から逆算して余裕をもって計画し、体重だけでなく、疲労感や体調、トレーニング状況、競技パフォーマンスなども確認しながら進めましょう。

〇脂肪を減らすためのポイント

上記を踏まえ、筋肉量をできるだけ維持しながら脂肪を減らすためには、次の点を意識しましょう。

  • 減量ペースは週あたり体重の0.5~1%程度を一つの目安とする
  • 過度なエネルギー不足を避ける
  • たんぱく質を十分に摂取する
  • 筋力トレーニングを継続する
  • 睡眠と休養を十分に確保する

特に、たんぱく質の摂取量は重要です。筋肉量の維持・増加を目指す場合、体重1kgあたり1日1.4~2.0g程度のたんぱく質摂取が一つの目安とされています(Jäger R, et al. 2017)。また、減量中で体脂肪が少ないアスリートでは、筋肉量の減少を防ぐため、体重1kgあたり1日2.0~2.4gという、より多い摂取量が推奨されています(Helms ER, et al. 2014)。

たんぱく質が含まれている食べ物

〇まとめ

「脂肪だけを落とす」ことは簡単ではありませんが、適切な方法を選択することで、筋肉量をできるだけ維持しながら脂肪を減らすことは可能です。体重計の数字だけにとらわれず、「体重を減らす」のではなく、「身体の中身を整える」という視点を持つことが、競技力と健康を両立した身体づくりにつながります。

執筆者
池尻大橋せらクリニック 理学療法士 山下 暁
監修
池尻大橋せらクリニック 医師 世良 泰
池尻大橋せらクリニック