ケガを避けてできる強度の高いトレーニング法
競技力向上のために押さえるべきポイント
競技力向上のためには、「強度の高いトレーニング」は欠かせません。
しかし一方で、「強度を上げた途端に痛みが出た」「頑張った結果、ケガをしてしまった」という経験を持つ選手や指導者も少なくないのではないでしょうか。
重要なのは、強度そのものが悪いのではなく、強度の上げ方や受け止められる身体の状態に問題があるという点です。
今回のコラムでは、ケガを避けながら高強度トレーニングを行うポイントとして、
①適切な負荷設定とフォームの精度、②疲労管理、という2つの視点をお伝えします。
〇適切な負荷設定とフォームの精度
トレーニングの負荷は「重いほど効果が高い」わけではなく、目的によって適切な回数と重さが異なります。
レジスタンストレーニング(筋トレ)では、一般的に以下のように整理されます。
- ● 最大筋力向上:6回以下
- ● パワー向上
・単発パワー:1~2回
・多発パワー:3~5回 - ● 筋肥大:6~12回
- ● 筋持久力:12回以上
ここでいうパワーとは「力×スピード」です。
単発パワーは、砲丸投げ、走り高跳びのように「一瞬で大きな力を発揮する能力」です。
一方、多発パワーは、バレーやバスケなど、連続ジャンプやプレー中の繰り返し動作のように、「高出力を何度も発揮する能力」となります。
ただし、負荷以上に重要なのがフォームの精度です。
例えば高重量スクワットで、膝が内側に入る、体幹が崩れるといった状態が続くと、筋力向上より先に関節や靭帯へのダメージが蓄積します。
そのため、強度を上げる前に「同じフォームを安定して再現できているか」を動画や第三者の視点で確認することが、安全に負荷を積み上げる土台になります。
フォームの精度を保ったうえで役立つ指標が、急性・慢性負荷比(ACWR)です。
ACWRは直近1週間の負荷を、過去4週間の平均負荷で割った値で、負荷増加の“急激さ”を数値化します。
研究では0.8~1.3の範囲にあるとケガのリスクが低いと報告されています
急性・慢性負荷比(ACWR)の計算方法について
内的負荷:主観的強度 0(非常に弱い)~10(非常にしんどい)
例:
1週間の主観的な平均強度7 × 平均トレーニング時間100分
1週間を含む4週間の平均 主観強度6 × 平均トレーニング時間110分
1週間の平均 700 ÷ 4週間の平均 660 = 1.06
外的負荷:
例)ランニング強度(速度)/距離/時間、ジャンプ回数、挙上重量・回数
1週間の走行距離平均 5km
4週間の走行距離平均 3km
5 ÷ 3 = 1.6
上記のように、トレーニングの急性・慢性負荷比(ACWR) の内的負荷は1.04、外的負荷は1.6となっており、外的負荷は過負荷であるため、ケガのリスクが高まっている状態であるということが言えます。
〇疲労管理
疲労には1つの要因だけでなく、複数の要因があります。
- ・筋肉の損傷、炎症
- ・疲労物質の蓄積
- ・エネルギー不足
- ・睡眠不足
- ・脳疲労(情報過多によるストレス)
疲労が蓄積するとフォームは崩れやすくなり、局所的な負荷増大につながります。
毎日トレーニングをすればよいというものではなく、トレーニングで起きた筋肉や体の回復を目的に、週に1日は休養日を取ることも大切です。
〇まとめ
トレーニングは「できる・できない」ではなく、「安全に積み上げられているか」が重要です。
フォームの精度と疲労感を常に振り返りながら、段階的に負荷を高めていくことが、ケガを予防しつつ競技力を高める最短ルートと言えるでしょう。
執筆者
池尻大橋せらクリニック 理学療法士 中山 みのり
監修
池尻大橋せらクリニック 医師 世良 泰
池尻大橋せらクリニック