ケガをしない身体をつくるために大切なのは、どんな人にも共通する3つの土台「筋力」「可動域」「柔軟性」を整えることです。
これらは相互に関係し合い、バランスが崩れると動作が乱れ、負担やケガにつながります。
本コラムでは、日常的に意識しておきたい「これだけはやっておこう」というポイントを紹介します。
〇筋力
筋力は、関節や骨を守る役割を果たします。特に体幹・臀部・下肢の筋力は、姿勢や動作の安定に直結します。
研究でも、体幹筋群の安定性が高いほど、下肢の怪我発生率が低下することが示されています。
また、筋力不足は関節への負担を増やし、捻挫や腱炎の原因にもなります。
これだけはやっておこう:
スクワットやプランクなど“自重でできる全身トレーニング”を行いましょう。フォームを意識し、呼吸を止めずに行うのがポイントです。
【スクワット】
準備:
足を肩幅よりやや広げて立つ。手は胸の前で組む。
方法:
・ お尻を後ろに突き出すようにゆっくりと腰を下ろす(画像①)。このとき膝と爪先は同一方向になるよう注意する。
※できる人は太ももが床と並行になるところまでお尻を落とす
・ 太ももとお尻を意識してゆっくりと立ち上がる。
・ 完全に膝を伸ばしきらず、少しだけ曲がった状態で止める。
(正しい姿勢)
①
(悪い姿勢)
注意点:
・つま先よりも前に膝が出ない。
・膝が内股にならない。
回数:
10回×3回で1セット 朝・昼・晩に1セットずつ
【プランク】
準備:
床にうつ伏せになる。手のひらは床につけても、こぶしを軽く握っても良い。
方法:
・ つま先を床につけ、腰を浮かせて体を持ち上げる。
・ そのまま姿勢を30秒キープする。
注意点:
・腰を反ったり、お尻が上がりすぎない。
・頭と踵が一直線になるように意識する。
回数:
30秒キープを朝・昼・晩に1セットずつ
〇可動域
可動域は、関節が本来の動きをスムーズに行える能力です。
例えば、足首・股関節・胸椎などの可動域が狭いと、その代償として膝関節や腰椎が過剰に動き、痛みや怪我を引き起こします。
可動域を整えることは、動作の“連動性”を高め、動きの効率も改善します。
いくつかの研究では、各関節の可動域が狭いと怪我の発生リスクが大きくなると報告されています。
これだけはやっておこう:
ウォーミングアップで「関節を大きく動かす」動的ストレッチを行いましょう。
【アンクルローテーション】
準備:
椅子に座るか、立った状態で行う。立っている場合は、バランスを保つために壁などに手を添える。
方法:
・ 片方の足を床から少し上げる。
・ 足首を内側にゆっくりとまわし、円を描くように10回ゆっくりまわす。(画像②)
・ 次に外側へゆっくり10回まわす。
※反対側の足も同様に行う。
②
【股関節回し】
準備:
安定した椅子に背筋を伸ばして座る。
方法:
・ 股関節を中心に、膝で大きな円を描くように時計回りに10回まわす。(画像③)
・ 次に反時計回りに10回まわす。
※反対側の足も同様に行う。
③
〇柔軟性
柔軟性は、筋肉が伸び縮みする能力。これが不足すると、可動域が狭まり、無理な動きや筋損傷を招きます。
一方で、柔軟すぎて関節が不安定になる場合もあるため、「コントロールできる柔軟性」が理想です。
研究でも、適度な柔軟性を維持することが筋損傷や肉離れの発生率を低減させると報告されています。
(Witvrouw et al., Sports Medicine, 2003)
これだけはやっておこう:
入浴後など身体が温まった状態で、静的ストレッチを各30秒程度行いましょう。
注意点:
呼吸を止めず、反動をつけずに「気持ちいい程度の伸び」で止める。
【ジャックナイフストレッチ】
方法:
・ 床または椅子に座った状態から膝を曲げ、両手でそれぞれの足首を横から掴む。(画像④)
・ 胸と太ももが離れない様にくっつけたまま、ゆっくりと膝を伸ばす。
・ 太ももの裏が痛気持ちいいところまで30秒間伸ばす。
④
【肩甲骨寄せストレッチ】
方法:
・ 背中で手を組み、視線を真っ直ぐ前に向ける。(画像⑤)
・ 両ひじを伸ばし、肩甲骨を寄せるように胸を開き、30秒キープする。
⑤
〇まとめ
怪我をしない身体づくりの三本柱は、筋力(支える力)、可動域(動く力)、柔軟性(しなやかさ)のバランスにあります。
これら三者の調和が取れてこそ「安全で強い身体」が成立します。
毎日数分でも「意識して動く・確かめる」ことが大切です。
セルフチェックで自分の身体の状態を把握し、無理のない範囲で改善していくことがケガをしない体への第一歩です。
執筆者
池尻大橋せらクリニック 理学療法士 佐藤 脩斗
監修
池尻大橋せらクリニック 医師 世良 泰
池尻大橋せらクリニック