〇万能型に必要な身体の土台とは?
「子どもにどんなスポーツをやらせたらいいのか分からない」。そんな声をよく聞きます。
サッカー、スイミング、体操、野球と選択肢は多く、どれも魅力的です。しかし本当に大切なのは、「どの競技を選ぶか」ではなく、「どんな身体の土台を育てるか」。
本コラムでは、スポーツ選びに悩むご両親へ向けて、子どもの体と心をバランスよく育てる考え方や、どんな競技にもつながる“万能型”の育て方を紹介します。
〇早くから一つのことに絞りすぎない方がいい理由
近年の研究では、幼少期に一つの競技へ絞る「早期専門化」は、ケガの増加や燃え尽きにつながる可能性が指摘されています
一方で、競技特性によっては早期から基礎習得が求められるスポーツもあります。たとえば体操や水泳、スケートのように技術習得のピークが比較的早く訪れる競技では、幼少期からの継続的な練習が必要とされることもあります。
ただし、それでも「早期専門化=良い」というわけではありません。専門的な練習の中に、基礎的な運動遊びや多様な動きを取り入れることで、ケガを防ぎ、競技を長く楽しめる土台が育ちます。
〇万能型の子どもが伸びる理由
幼少期は神経系が大きく発達するゴールデンエイジ。
この時期に走る・跳ぶ・投げる・バランスを取るなど多様な動きを経験することで、脳と体の協調性が高まり、どんなスポーツにも共通する「運動の基礎力」が身につきます。
さまざまなスポーツを経験することはとても有益ですが、一方で「周りより上手くできない」と感じて自信をなくしてしまう子がいるのも事実です。
大切なのは、すべてができることではなく、「楽しみながら経験できること」。得意な動きもあれば、苦手な動きがあって当然です。
子どものペースを尊重し、無理なく多様な体験を積ませることが、その子の可能性を大きく広げる土台となります。
〇有名スポーツ選手の幼少期も…
NBAで活躍する八村塁選手も、幼少期はバスケットボール一筋ではありません。
小学生では野球の捕手・4番打者を務め、陸上(短距離)でも県大会優勝の経験があります。
投げる・打つ・走るといった多様な動きが、現在のパワーやスピードの基礎となりました。
〇運動能力を伸ばすスポーツ例
万能型を育てるためのスポーツ例として、走る力は陸上やサッカー、跳ぶ力は体操やバスケットボール、投げる力は野球やドッジボール、バランスや柔軟性は体操やダンス、空間認知は球技全般が挙げられます。
季節ごとに異なる種目を取り入れるだけでも、偏りのない「動ける体」が育ちます。
〇まとめ──スポーツ選びは手段
スポーツは子どもの可能性を広げるための手段です。
焦らず多様な動きを経験させることで、子ども自身が「これをやりたい」と思える競技に出会えます。
万能型の育成とは、どんな環境にも対応できる柔軟な身体と心を育てること。
親ができる最大のサポートは、“選べる準備”を整えてあげることなのです。
執筆者
池尻大橋せらクリニック 理学療法士 石塚 智規
監修
池尻大橋せらクリニック 医師 世良 泰
池尻大橋せらクリニック