反応速度って鍛えられるの!?

サッカーの切り返しや野球のバッティングなど、スポーツでは「反応速度」が速い選手が有利になる場面が多くあります。
相手や物の動きを察知し、いち速く動ける人は同じ体力でも結果に大きな差を生みます。
では、この「反応速度」は鍛えることができるのでしょうか?
本コラムでは、運動場面で役立つ「反応速度」について、その仕組みや向上させるための方法をご紹介します。

〇反応速度とは何?

反応速度とは、外部刺激に対し人が反応するまでにかかる時間を指します。
野球のバッティングで例えると、
目(視覚)でボールが飛んでくるのを見る(刺激に対して反応する)→ 脳がボールの軌道やスピードを判断し、どのようにバットを振るかをイメージする→ 筋肉を動かしてボールを打つ、という情報伝達が行われています。

また、スピードが速いスポーツにおいては、選手の動きやボールに反応してから動いたのでは間に合わないため、動作が起こる前に「意図された動き」を事前に予測する能力が、反応速度を速めるために不可欠です。

〇反応速度を簡単に測定する方法とは!

実際にどれくらいの速度で反応できるのかを簡単に評価できる方法として、「定規落下テスト」があります。
このテストでは、視覚刺激から運動を実行するまでの時間を評価することができます。

  1. ペアの人が定規の上端を持ち、実験者が構えた手の高さに「0 cm」の目盛を合わせる
  2. ペアの人は合図をせず、そっと定規を離す
  3. 実験者は親指と人差し指を約4cm離した状態から出来る限り早く定規をつかむ
  4. 掴んだ定規の親指の上の目盛を確認する

この動作を5回行い、平均値を求めます。
定規の目盛から反応時間を計算すると以下のようになります。
20代の一般的な男女では平均0.25秒と報告されています。

  • 5 cm → 0.10秒
  • 10 cm → 0.14秒
  • 15 cm → 0.18秒
  • 20 cm → 0.20秒
  • 25 cm → 0.23秒
  • 30 cm → 0.25秒

〇反応速度は鍛えられるの?

反応速度は生まれ持った才能ではなく、鍛えることができます!
以下におすすめのトレーニングを紹介します。

① 鏡トレーニング

2人で向かい合い、一方が手足を多方向に動かし、もう一方が鏡のようにその動きを真似します。
瞬時に動きを捉えて模倣することで、判断力と反応速度を鍛えることができます。

② 動体視力トレーニング

首を動かさず、眼球の動きだけで左右の親指を交互に見ます。
動体視力を鍛えることで、相手の素早い動きを察知しやすくなり、反応速度の向上につながります。
走行中の車や電車から外の文字を読むなど、日常生活の中でも実践可能です。

〇反応速度を活かすためには?

トレーニングで反応速度を鍛えても、実践で活かせなければ意味がありません。
競技特性に応じた動作の反復や心理的側面のトレーニングも重要です。

① 競技特性に応じた動きを反復する

反応速度が速いスポーツ選手でも、別の競技では一般人と同等の反応速度であったと報告されています。
特定の動作を反復して練習することで神経伝達の効率化や、脳の情報処理時間の短縮につながり、反応速度を速くすることができます。

② 心理的側面の重要性

感情、注意力、判断力など、脳の情報処理や精神状態は反応速度に大きく影響します。
疲労やストレス、恐怖を感じている状態では反応速度が遅くなり、集中力が高い状態では反応速度が向上します。
質の良い睡眠や休息を取り、疲労を取り除いた状態を保つことが大切です。

〇まとめ

反応速度は生まれ持った才能ではなく、練習の積み重ねと意識によって高められる能力です。
動作の反復練習や集中力の向上、心身のコンディションを整えることで、瞬間の判断力が磨かれます。
自分の体と向き合いながら、反応速度を鍛えていきましょう。

執筆者
池尻大橋せらクリニック 理学療法士 山下 暁
監修
池尻大橋せらクリニック 医師 世良 泰
池尻大橋せらクリニック