足が速くなるために鍛える部位は?
「足が速くなりたい!」と、学生時代に誰しも一度は考えたことがあるのではないでしょうか?また、スポーツにおいては、サッカーや陸上はもちろん、野球やバスケットボールなど多くの競技で走る速さはパフォーマンスを大きく左右します。では、どうすれば速く走れるのでしょうか?今回のコラムでは速く走るための原理や向上させる要因、鍛える部位、トレーニングについて紹介していきます。
〇速く走るために必要な「力の立ち上がり速度」(RFD)について
人が走るとき、地面を蹴る瞬間は一瞬ですが、その短い接地時間の間に、いかに強い力を素早く発揮できるかが、初速の速さやトップスピードの伸びにつながります。これを測る指標が「力の立ち上がり速度(RFD:Rate of force development)」です。
筋力そのものが大きくても、発揮が遅ければ意味がありません。先行研究では、速いRFDを持つ人ほどスプリントパフォーマンスが優れていることが示されており、RFDは運動の爆発的な質に直結するため、重要な要素となります。
〇RFD向上の生理的要因
RFDは以下の要因によって高められます:
- 神経系適応:素早い力発揮には、神経の活性化強度や運動単位の同期が重要
- 筋・腱の構造特性:腱の硬さや筋張力が増すと、より速い力の伝達が可能
- 筋線維の特性変化:筋繊維のタイプ変化(速筋優位や筋厚の増加)
〇足を素早く前に出す力について
速く走るためには「地面を蹴る力」だけでなく、「足を素早く前に出す力」も重要です。そこで働くのが 腸腰筋(大腰筋・腸骨筋)や股関節屈筋群 です。これらは太ももを持ち上げる動きに関与し、脚を前へ素早く振り出す役割を担います。もしこの働きが弱いと、足がもつれるような走り方になり、ストライド(歩幅)やピッチ(回転数)が上がりません。
先行研究でも、腸腰筋の筋力が短距離走のスプリントパフォーマンスと強く関連することが示されています。例えば、大腰筋と大殿筋を含むほとんどの体幹と下肢の筋断面積は、スプリンターの方が非スプリンターよりも有意に大きかったと報告されています。
〇足を速くするためのトレーニング
今回、ご紹介した、速く走るための「力の立ち上がり速度」や「足を素早く前に出す力」を向上させるトレーニングをご紹介します。
先行研究では意図的な高速度での運動でRFDの改善がみられるため、トレーニングの際は、「なるべく速く」を意識しながら、また、負荷の設定として、はじめはチューブをつけずに、慣れてきたら中程度の力で上げられるチューブをつけてやってみましょう!
【スタンディング・ヒップフレクサー・レイズ】
①壁に手を付けます。頭・骨盤・膝が斜め一直線になるように姿勢を整えます。
②背中が丸まらないようにしながら片足をお尻の高さまで持ち上げます。
③ゆっくりとおろします。
左右各12回
ポイント:軸足は軽く膝を曲げて、片足を上げるときに骨盤・背中が丸まらないように意識しましょう。持ち上げる足は素早く!



まとめ
速く走るための理論を知ること、トレーニングでも理論を意識していくことで、皆さんも「スピードを出せる身体」に近づいていきます。「足を速くしていきたい!」という方、ぜひ、日常の生活のトレーニングで活用してみてください。
執筆者
池尻大橋せらクリニック 理学療法士 中山 みのり
監修
池尻大橋せらクリニック 医師 世良 泰
池尻大橋せらクリニック