ダイエットのために運動を始めたのに、「全然汗が出ない」と感じている人は少なくありません。汗をかけないという現象は、単なる体質の問題にとどまらず、代謝機能や自律神経の働き、生活習慣の乱れなど、さまざまな要因が関与しています。
本コラムでは、汗をかけない理由、そしてダイエットに適した発汗習慣の作り方について、専門的な視点から解説します。


1. 汗をかけない原因とその理由

汗が出にくい背景には、いくつかの要因が存在します。

(1)運動強度の不足

体温を上昇させるには、ある程度の運動強度が必要です。たとえば、ウォーキング程度では深部体温が十分に上がらず、発汗反応が起きにくくなります。

(2)筋肉量の不足

骨格筋は熱産生の中心的な組織です。筋肉量が少ないと基礎代謝が低く、熱を生み出しにくいため、発汗に至らないことがあります。

(3)水分および電解質の不足

体内水分量が不足すると、恒常性を保つために発汗は抑制されます。特に利尿作用の強いカフェイン摂取や、水分制限を伴うダイエットでは注意が必要です。

(4)自律神経の機能低下

ストレスや睡眠不足、栄養不足などで自律神経が乱れると、体温調節中枢の反応が鈍くなり、汗が出にくくなるケースがあります。女性に多い冷え性もこれに関連します。

(5)汗腺の非活動化

長年ほとんど汗をかかない生活をしていると、汗腺の活動が鈍化し、発汗そのものが起きにくくなることもあります。

2. ダイエットに適した「汗のかきかた」とは

汗をかくと水分量が減り、体重は減少するのでダイエットした感じになります。ただ、これは脂肪燃焼に繋がらないため、汗をかくこと自体が重要ではありません。ダイエットにおいては脂肪を燃焼しやすく、代謝が活発であることが重要なため、熱産生と発汗を促す生活習慣の構築(発汗しやすい身体)がダイエットの鍵となります。

・運動面:中~高強度の有酸素運動(例:ジョギング、高強度インターバルトレーニングなど)を週3回以上継続することが推奨されます。運動は代謝・体温上昇の効果が高く、汗腺の活性化にも有効です(Su Meihua et al.2023)。

・栄養面:エネルギー源となる糖質や脂質の極端な制限は避け、たんぱく質を中心としたバランスの良い食事を心がける必要があります。また、ナトリウム・マグネシウム・カリウムなどのミネラルを含む食材(味噌汁、海藻類、果物など)も意識的に摂取しましょう(日本人の食事摂取基準2025年版参照)。

・生活面:半身浴や足湯での温熱効果、就寝前のストレッチ、白湯を飲む習慣などにより、深部体温と自律神経の調整能力を高めていくことが大切です。

まとめ

「汗をかけない体」は、単に脂肪が燃えにくいという問題だけでなく、代謝や自律神経、水分調整機能の低下を示すサインでもあります。重要なのは「たくさん汗をかく」ことではなく、「自然に汗が出る体質」を目指すこと。運動・栄養・生活習慣を整えることで、発汗を味方にした健康的なダイエットを実現しましょう!

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執筆者
池尻大橋せらクリニック 理学療法士 髙橋 遼

監修
池尻大橋せらクリニック 医師 世良 泰

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